📮KURUME LETTER
学生サークルteam.csvが沖縄・離島の小学校でAI(人工知能)やプログラミングの授業を実施【商学部】
商学部学生有志によるボランティアサークルteam.csv*は、2024年2月20日、沖縄県の離島 伊江島にある伊江小学校で全学年を対象としたプログラミング授業を実施しました。
この授業は、伊江小学校との共同プロジェクトとして、子どもたちの「プログラミング的思考」を育むことを目的に企画されたもので、伊江小学校からの依頼を受けて昨年度より実施しています。(※昨年の様子)
*「team.csv」の由来は「Computer Scienceを活用したVolunteerを行うTeam」で、商学部商学科の木下和也教授指導のもと、学生が主体となりICTを活用した地域の課題解決やICT教育イベントなどを全国的に行っています。
離島での授業実施に伴い、授業を担当する学生2人が2日前から現地に向かい、授業準備やリハーサルを行い、当日は朝から夕方まで連続で全学年に授業を行いました。今回は、ビジネスの現場でも活用され始めたAI(人工知能)の仕組みをテーマに取り入れ、特徴ある授業を企画しました。
当日は、朝から順番に3・4年生、5・6年生(複式学級のため、それぞれ2学年同時に授業を実施)、昼食と清掃を挟み、1年生、2年生を対象に授業を行いました。
授業内容は学年ごとの発達段階に合わせ、3・4年生には機械学習の体験からAI(人工知能)の仕組みを理解するプログラミングの内容、5・6年生にはプログラミング的思考と算数・数学の魅力を伝える数の規則に関する内容(素数判定とコラッツ予想)、1年生と2年生には昨年と同じ「アルゴロジック」というアプリケーションを利用したアルゴリズムの基礎を授業実施しました。
1・2時間目(3年生・4年生のクラス)
1・2時間目は、3・4年生に向けて「機械学習」をテーマとした授業を実施しました。
「機械学習」はAI(人工知能)の仕組みの一つで、「画像を何度も学習させることで識別できるようになる」という実験を児童に体験してもらいました。
実験では、最初に土星と木星という外見的に特徴的な違いのある惑星の写真をコンピュータに学習させどのくらい識別できるのかを検証し、人間の目からは大きな違いに見えても、コンピュータで識別するのは難しいということが分かりました。
次に、各自のChromebookのWebカメラを使って、自分の手を「グー・チョキ・パー」の形にして何度も撮影し、コンピュータに学習させる実験を行うと、コンピュータはかなりの高確率で識別できるということが分かり、子どもたちが興味津々の様子で取り組んでいる姿が見られました。
3・4時間目(5年生・6年生のクラス)
3・4時間目は、5・6年生に向けて「算数の実験を通したプログラミング」をテーマとした授業を実施しました。
実験内容は「素数判定」と「コラッツ予想」の計算アルゴリズムで、どちらの計算にもパターンがあり、それをプログラムとして表現する方法を児童に理解してもらいました。
小学生にとっての「実験」といえば理科の授業のイメージですが、算数や数学の世界にも実験があるということを知ってもらえたようです。
高学年にもなると、スクラッチなどのブロックプログラミングの経験もあり、アルゴリズムの考え方を意識して実習しようとする児童もいます。このような児童が理解しやすいように、アルゴリズムをブロック型の図形で説明し、それをそのままの並びでコードとして記述するという流れで説明しました。
今回のテーマは、数学的には興味深い反面、難しいものでもありますが、計算そのものは小学生にも理解できるため、その計算がパターンであること、そして「順次」、「反復」、「分岐」というアルゴリズムの基本要素からできていることを児童に理解してもらいました。
5時間目(1年生のクラス)、6時間目(2年生のクラス)
昼食と清掃を挟んで、5時間目には1年生、6時間目には2年生を対象に、キャラクターをゴールさせるための道順を論理的に考える、ゲーム性のあるアプリ「アルゴロジック」を使い同じ内容の授業を実施しました。
プログラミング的思考を育むアイデアがたくさん詰まった「アルゴロジック」を活用することで、文字や数字を使いこなせない低学年でも「考えることで解決する体験」に楽しんで取り組むことができました。
また、この授業ではキャラクターをゴールさせるための答えは一つではなく、お互いに異なるアイデアを認め合うことや、正解した人をみんなで称えるという、マナーや共生の考え方を育む内容にもなっています。
電子黒板を使って発表者の児童がキャラクターをゴールさせると、みんなで「Good Job!」と声を出し、両手を突き出すアクションで教室中が盛り上がりました。
授業を振り返って ― 先生方からのコメント ―
伊江小学校教頭の田仲恒先生と教務主任の上間雄大先生が久留米大学広報室からのインタビューに答えてくださり、「プログラミングの授業は学年ごとの発達段階に合わせた内容が準備されていて、児童は意欲的に挑戦しています。最初は緊張していた子も、大学生が自己紹介をして緊張をほぐしてくれたので、すぐに打ち解けて授業に馴染むことができました。プログラミングの授業の経験を通して、児童が問題解決能力を身に付け、いろんな発見に繋がる機会になったと思います。大学生が丁寧にサポートしてくれて、“自分で出来た”という経験が児童の自信にも繋がったと思いますし、大学生と交流できたのも良い経験になったと思います」「昨年から児童が楽しんで興味を持って授業に参加している姿があり、児童の成長が感じられます。小学生には難しいのではないかと思うような内容や初めて学ぶ内容でも、学年に合わせて大学生が優しく教えてくれるので、飽きずに集中して皆が楽しく参加できています。今後も継続して取り組んでいけたらいいと思います」と、感想を述べられました。
また、校長の島袋洋先生からは「児童はICTを活用した日常の学習に積極的に取り組んでいて、今回学生さんが各学年の発達段階に応じた内容で課題を解決していく過程は児童にとってとても興味深く、楽しんで探求していくことができたと思います。Chromebook等のICT機器を活用することで、生活がより豊かで便利なものとなることを学べたらと願っています。これからの将来についても、機器や情報ツールを効果的に活用することで困りごとの解決に役立てられると希望が広がると感じています。児童が生き生きと学習していて嬉しく思いますし、今回の授業を通して学んだことが今後の学習や生活に繋がって広がりが出てくると今回実施した意義がさらに深まると思います。はるばる遠い離島の地で授業を実践していただきありがとうございました」とのコメントをいただきました。
今回の授業を担当した濱﨑結衣さん(商学科3年)と田鍋実花さん(商学科2年)は、出身地域が島ということで子どもたちとも共通の話題で盛り上がり、親近感を持ってもらえたようです。
今回の授業は、AI(人工知能)や数学的要素を全面に押し出したもので、濱﨑さんと田鍋さんは「今回の授業テーマを決める際、近年重要性が増すデータサイエンスの要素を多く取り入れたプログラミングを意識した」と話し、商学部の学生の間でもデータサイエンスへの関心が高まっている様子がうかがえました。(※伊江小学校の記事)