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竹村眞一氏SDGsに関するリモート講義
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竹村眞一氏SDGsに関するリモート講義

会場となった御井図書館3階のAVホールには、2つの不思議な地球儀が置かれ、全面の大型スクリーンには同じ地球儀と京都芸術大学教授の竹村眞一氏が映し出されています。これは文学部国際文化学科の異文化体験実習1(担当:狩野啓子教授)として開催されたリモート授業の様子です。

「SPHERE」は地球的・人類的課題を「見える化」する

球体ディスプレイに、雲の動きや台風の発生状況、マグロの回遊ルートなどの地球のリアルタイムの観測データを映し出す、インタラクティブなデジタル地球儀「SPHERE(スフィア)」を使用し、竹村氏が地球の抱える課題について話をされます。

竹村氏の傍らの「SPHERE」と会場に置かれた2つの「SPHERE」は連動しており、黄砂や大気汚染が世界中に広がっていく様子、この100年で地球人口が16億人から80億人にまで増加していく様子、森林破壊や都市型の消費生活によって地球の温暖化が進んでいくこと、それが大河を涸らし農業に大きな影響を与えること、さらに水産資源の減少、自然動物の生息域の消滅、感染症のパンデミックなどにも繋がっていること、他にもマイクロプラスチックや飢餓、様々な地球的・人類的課題が次から次へと、この地球儀に映し出されていきます。

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宇宙船地球号の乗組員として考える

「SPHERE」を使って、地球という視点で語られることで、すべての問題は一定の地域のローカルな問題ではなく、地球全体で繋がっており、みんなの課題であることがよくわかりました。今回の講義にはオブザーバーも参加しており、学生はじめ聴講者は、改めて「ジブンゴト」として、地球の抱える問題について感じ、考える機会になったのではないでしょうか。

オブザーバーとして参加された松枝小夜子さん(重要無形文化財久留米絣技術保持者会・保持者)は、「今回の講義に使われた広い視点での生命体として見えてくる球体・地球に境界はない。森羅万象、長い歴史のなかのほんの一瞬を担う私たちは地球の歴史を綴るひとりである。この地球儀は、地球上の生命の歴史、地形や気温の変化と風土と産業、建築物やさらには文化の理解を深めるものである。地球を丸ごと生命体とし、そこに生きる人類の幸せへのつながりを大切に慈しむ。慈しみの心は、今世紀の若者・人類に期待される平和への世界観を確立し、希望へと繋がっていくであろう」と感想を述べられました。

未来は変えられる ----- 私たちの選択

前半の地球の現状にはショックを受けましたが、竹村氏の講義は「我々の今の選択によって未来は変わる」という力強いメッセージに続いていきます。乳児死亡率が下がり、寿命が劇的に伸びたのは社会課題を解決してきた私たちの成功例である、Well-beingを実現してきた私たちは、今、大量消費型の社会を見直し、サスティナブルな社会を目指す自己変革の力を秘めている、という希望の言葉をもって講義は締めくくられました。

竹村眞一

京都芸術大学教授、ELP代表、Sphere/触れる地球発案者

東京大学文学部哲学科卒、同大学院総合文化研究科(文化人類学専攻)博士課程修了。東北芸術工科大学教授などを経て現在、京都芸術大学教授。

独自に開発した「触れる地球」は2005年グッドデザイン賞金賞(2005年)、経済産業省キッズデザイン賞・最優秀内閣総理大臣賞(2013年)を受賞。

東日本大震災後、政府の「復興構想会議」専門委員、国連本部アドバイザー(『国連防災会議』デジタル版監修;2012~2019)、東京都環境審議会委員(2017~)。

著書に『地球の目線』(PHP新書)、『宇宙樹』(慶應大学出版会)、『地球大学講義録』(日本経済新聞社)、『地球を聴く』(坂本龍一氏との対談;日経新聞社)など。『宇宙樹』は高校の国語の教科書にも掲載されている。

NHK番組では『コズミックフロント』(2022年12月)、『ニュース9』(2015年;異常気象特集)などで「触れる地球」のデモンストレーションとともに地球環境問題の解説を行う。

〇SPHEREについて  http://sphere.blue/