📮KURUME LETTER

【教員コラム】問題解決学 / 川路 崇博(文学部 情報社会学科)
🧑‍🏫教職員

【教員コラム】問題解決学 / 川路 崇博(文学部 情報社会学科)

専門はなにかと問われますと、もごもごととても曖昧な答えしかできません。そこで出身大学院大学の研究科名である「知識科学」と答えるようにはしております。しかしながら、知識科学というもの自身も非常に曖昧です。少しお詳しい方であれば、野中先生のSECIモデルを思い浮かべることでしょう。知識創造理論として経営学でよく知られていますが、私はどちらかというと情報系を得意としていますし、直接関係なさそうな気もします。

このように曖昧模糊としている理由を考えてみますと、私の研究対象が「問題を発見・解決すること」自体にあるからではないかと思います。このテーマには、気が付いたら巻き込まれていました。いかにして貧困から抜け出すか、その後いかにして進学を果たすか、いかにして大学・大学院卒業後の進路を切り開くか、起業した会社をいかにして経営していくかなど、まだまだ中途な人生経験ながら、生活そのものが常に「問題を発見」し「それを解決する」ことの連続だったように思います。

これまで説明しようのない「謎の力」によって、さまざまな問題をそれぞれ解決し、現在に至ってはおりますが、それを超能力や神憑りと説明しては、汎用性も発展性もありません。幸運なことに大学院での指導教官の先生が、第五世代コンピュータプロジェクトに携わっていながら創造性研究に深い造詣をお持ちでした。先生のもと、私は学部で経営学を学んでいたにも関わらず畑違いとも言える「創造会議をコンピュータで支援する環境の開発と評価」の研究を進めることとなります。とはいえ、比較的マクロなこれまで人生の流れと、ミクロな研究テーマがリンクした瞬間でもありました。

自分の専門を軸にする方法ももちろんあります。しかし目の前にある、または見つけてしまった問題を軸にしそれを解決しようとする方法もまた存在しています。道端に落ちているコインを見つけようとするが如く、学内を何気なく歩く時も、通勤で車を運転する時も、趣味のオートバイでのキャンプ旅に出かける時も、教科書に載っていない「何か」を見つけ、それをノートに書き続けています。科学の方法として仮説とその検証がありますが、このようにメタ情報を常々かき集めていると、ある日それらが聴いたことがない音を立ててかみ合い、新しい「価値」を生成することがあります。その瞬間に常々得も言われぬ高揚を感じ、しかも異なる価値の結合が、問題を解決する一端であることもしばしばです。