📮KURUME LETTER
【教員紹介】野田 耕 教授(人間健康学部 スポーツ医科学科)
自己紹介 野田 耕(人間健康学部 スポーツ医科学科)
人間健康学部スポーツ医科学科の野田 耕(のだ こう)です。
主に、保健体育科教師を目指して教職課程を履修している学生さんに、授業方法を教える「保健体育科教育法」、学校で子どもの生命・身体を守り、いかに健康・安全を確保するかを教える「学校保健」を中心に指導しています。
中学・高校の6年間は、陸上競技の短距離・中距離の種目に取り組んでいました。ちょうど、高校生の頃に箱根駅伝のテレビ中継が始まり「この舞台で走りたい」という思いもあり、日本体育大学に進学しました。駅伝選手になることはできませんでしたが、そこで高校の保健体育科の教師になることを目指して学び、大学院に進学して助手をした後に、中高一貫校で講師を務めました。しばらくして都内の大学からお声かけいただき大学で教鞭をとることとなり、「高校教諭」としてではありませんが、「大学で保健体育科の教師を目指す学生を育成する」立場として、ある意味「夢」を果たすことができ、今に至ります。
その中高一貫の男子校で講師をしていた時にその学校のベテランの先生から説いてもらった「意味のあることを、情熱を持って、上手に教えてこそ、真の保健体育科教師である」という言葉が、今の私の教育に息づいています。
当時25、6歳だった私は、有り余る体力、学生時代に培った運動能力を武器に、体育(実技)の時間は生徒と一緒に汗だくになって運動・スポーツを行うというだけの指導しかできていませんでした。その恩師の授業を参観した後は「保健体育の授業観」が一変し、50分の授業で生徒にからだや運動・スポーツの知識や技能、運動への取り組み方をどのように工夫して修得させられるのかということを意識するようになりました。
その後は先輩教師や良い授業実践者の授業を所々へ見に行き、自分なりに考えながら教育実践に取り組みました。以来、教育現場の恩師から説かれたこの言葉を大学においても教育・指導の柱として位置づけ、私自身がより一層、具現化できるよう努めています。(なかなか“上手に教える”ことはできておらず、まだまだ修行中です)
その他にも、福岡県の「タレント発掘事業」といって、小学校4年生から中学生の子どもたちの運動能力を測定して、伸びそうな子をピックアップし様々なスポーツ経験をさせ、将来的に専門種目でオリンピック選手を輩出することを目指す、といったことにも関わらせてもらっています。ようやく金メダルに手が届きそうな選手が育ち、これからが楽しみな夢のある取り組みです。
最近の子どもたちは、コロナ禍を経て、全国的に運動量が低下してきています。そのような中で、いかに運動をやりたいと思わせるかは我々保健・体育教育を行う者の使命で、より運動量が増えると言われている主体的な身体活動(楽しいと思ってやる運動)を子どもたちが自らの意志で行い、社会で必要とされるしっかりした身体づくりに繋がるような指導ができる学生を育てていけたらと思っています。また、「体育嫌いをゼロにしたい」という保健体育科教員の永遠のミッションを果たすべく、共に学びを深め、社会にも貢献できればと思います。
担当科目について
「教科指導」「生徒指導」「課外活動指導」がきちんとできる「よい保健体育科教師を育成する」ことを使命に教育を行っています。
そのための基礎理論として「保健体育科教育法」のⅠ、Ⅱで体育科教諭、保健科教諭として学ぶべき歴史や制度、学習内容・指導法を座学で学んでもらい、Ⅲ、Ⅳの模擬授業で実践に進みます。模擬授業では、生徒役の学生を相手に模擬授業を行い、その様子をビデオ撮影してみんなで見ながら振り返り、さらに分析しフィードバックします。
教師行動には一般的に、インストラクション(直接的指導:説明・指示・演示等)、マネジメント(管理的行動)、モニタリング(巡回監視、観察)、インタラクション(ほめる・助言・励ます・叱る等を行い矯正する)の4つがあると言われており、それができるようになるよう、模擬授業という実践で指導していきます。
学校現場で授業を受ける子どもたちは、あまりにインストラクションやマネジメントの時間が多いと「つまらない」と感じてしまい、その時間が減り活動量が増えると「楽しい」と感じるとされています。とは言え、きちんとした説明で授業への取り組み方やルールをきちんと理解させるようなことも重要ですので、そのバランス、塩梅を感覚的に養うことも、この模擬授業では目指しています。
もう一つは、私の主要教科でもある「学校保健」です。この科目は、学校で生活する子どもたちの「生命、身体を守り、発育発達を促す」ための授業科目で、保健体育に限らず学校生活全般に関係する、教育現場では非常に重要なものです。特に、熱中症や食中毒、感染症が増えている昨今、いかにリスクを減らすかについて学ぶ、全ての学校教職員は意識しておくべきものと言えるでしょう。
例えば、ノロウイルスが原因で教室で嘔吐した子がいたとしてその処理の仕方や、スポーツ医科学科の学生であれば体育館の運動器具やプール、校内のさまざまものの安全点検をどのようにして行うか、具体的な方法を修得させるものです。
- 学校保健(学校安全を含む)
- 保健体育科教育法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
- 発育発達論
- 教育総合演習Ⅲ・Ⅳ
- 演習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ
- 教育実習事前指導(保体)
専門分野:体育科学
研究テーマ (参考:研究者紹介ページ)
- 子どもの身体活動を生起する要因
- 子どもの生活習慣と体力・運動能力,身体活動との関連
- 中学校および高等学校における保健体育授業および保健体育科教員の特性 など
ゼミの活動について
将来、保健体育科の教員になりたい学生さんを中心に、4年生を8名、3年生を3名受け持っています。ちょうど今、3年生では子どもの運動にまつわる下位教材作りを、4年生では、自律神経や体力・運動能の発達といった「子どもの実態を知る」学びをみんなで行っています。
下位教材とは、例えば、マット運動で後転ができない子をできるようにするために、その前段階でゆりかご運動をさせるような、そこに行き着かせるまでの補助的な教材のことです。それを学生さんに自身で考えて作ってもらいます。
4年生でやっている「子どもの実態を知る」学びでは、「子どもの自律神経の不調」や「運動能力低下の要因」を探ろうといったことをテーマに、「今の子どもたちは昔に比べて保温調整が鈍いのは冷暖房の整った環境で育ったことで自分の自律神経がきちんと働かなくなったという環境要因も背景にあるのではないか、他にどんなことが考えられるか」といったことをみんなで議論し学びを深めています。
学生の皆さんには、まず自分で思考して即行動する、まず一歩踏み出す、やりたいこと考えたことを感じて、失敗を恐れず、まず一歩踏み出すということを意識してほしいと思います。特に保健体育の教員は、人の仕事でもやるぐらいの気概がないと務まりませんので、さまざまな経験を通して積極性も養っていってほしいです。
受験生へのメッセージ
久留米大学の良さは、よく言われますが「教職員と学生の距離が近い」ということです。少人数教育ですので、教員間でも学生のことをきちんと把握して共有できています。スポーツ医科学科は特に1学年70名の定員であり、コミュニティーを作るのにちょうどよい規模感なんだと思います。
「保健体育科教員を第1志望にしている高校生がいたら、私が実践力のある教員に養成してみせるので、全員この久留米大学人間健康学部スポーツ医科学科に飛び込んできなさい!」とあえて熱血教師風な言葉でお伝えしたいです。そして教員一同で愛を持って指導し、現場で通用する保健体育科教員にして輩出することをお約束します。人にものを教えることは大変さもありますので、それなりの覚悟も必要ですが、良い教員になれるよう全力で指導します。
好きなもの、はまっているものなど
基本的に身体を動かすのが好きで、学生の頃から部活でやっていたロードバイクが趣味で今でも走っています。海岸線や河川敷などロケーションの良いところを風を切って走るのはとても気持ちがいいですし、ホイールなどのパーツを自分で組み替えメンテナンスする楽しみもあります。80キロ位の距離を4時間ほどかけて走り、途中で立ち寄るパン屋さんなども楽しみながら、いい気分転換になっています。学生の頃からすると5台くらい乗り換えてきましたが、体力に陰りも見えてきたので、今の自転車が最後の相棒になるのではないか思います(笑)
もう一つ、顔に似合わずと思われるかもしれませんが、ハイビスカスを10年くらい前から育てていて、今は5株ほど育てています。私は夏が好きで、それを象徴する明るい花に魅力を感じています。育てればそれに応えて美しい花を咲かせてくれ、また、土に触れるという人間の本能に通ずる部分にも魅力を感じているのかもしれません。今年も美しく咲いてくれています。